中学2024年中学校新教頭、田中歩先生インタビュー

2024年中学校新教頭、田中歩先生インタビュー

2024年中学校新教頭、田中歩先生インタビュー

2024年度は、田中 歩先生が中学校教頭に就任しました。
直近で6年間、高等学校に籍を置き教務主任を務めた田中先生の主導する今後について伺いました。

新学期が始まりましたね。早速ですが、着任早々の取り組みについて教えてください。

ひとつは道徳教育の充実です。今の子供たちすべてに当てはまるわけではありませんが、現代の考えの一つに、食べたことがないようなものをネットで調べた後に「不味いらしい」「食べないほうがいい」に完結してしまうことが散見されます。「経験してみる・やってみる」を目指し、それを学びのカテゴリーに置き換えたら、道徳に行きついたんです。私立学校は本校を含めて探究を熱心に行いますが、そのあたりは手薄な気がしています。
本校は生徒のほとんどが公立小学校からの入学ですが、小学校での学びについて考え、その上でより良く学びを展開するために、まずは小学校の先生による道徳の授業の教員研修を行い、現在小学校で実際に行われている授業を体験するところからスタートしました。

「道徳」とは新たな取り組みですね、具体的な構想はありますか。

対話を重視してさまざまな価値観を交わす「哲学カフェ」の設置を教務主任を中心に展開中です。哲学というと重い印象ですが、そうではなく多様な価値観の人たちがフラットに語り合える状況を創ることが共感的なコミュニケーションの一歩だと思っています。
幸い校長がやりたいことをやらせてくれるので、新たな土壌を開拓しやすい環境があります。
教員も生徒も、失敗を恐れず挑戦する機会を設けることが重要だと考えています。

「新入生オリエンテーション」が1年生の初めての行事でしたね

そうですね、「思考コード」を基に思考と行動を通して生徒の変化を目指した内容です。アイスブレイク、グループ活動、資料作りからの自己紹介を行って、緊張感のある関係から親和性と協調性を引き出しました。
自分を表現する場面では、漢字1文字を選び、色紙に筆で書いてもらいます。「なぜその1文字を選んだか」に加え、「10年後の自分」について話してもらいます。自分のことでも、絵で社会を描いてもいい。もちろん教員たちも発表しました。2日目にはもうリーダーシップを発揮する生徒が自然発生していて、そうなればあとは生徒中心、クラス目標や委員会・係決めは生徒に任せることができます。
筆と紙のアナログからスタートしたオリエンテーションも、2日目にはICTセクションへ入ります。手作業がデジタルだと一瞬で処理できることを生徒たちは体感したと思います。以前は新入生オリエンテーションを宿泊型で行っていましたが、中高合わせて新入生400名が一斉にWi-Fiに繋げる必要があるプログラムをホテルで行うのは難しいこと、登校の慣れ、費用としてかかるものを中身に投入できる点も踏まえ、登校型にしています。

今年の中学校の授業での変更点はありますか?

はい。「探究」の授業はIBL(Inquiry Based Learning)と改めました。
IBLのIはInquiryで、(the process of asking)a Question、探究における“訊ねる過程”という位置付けです。「どう考えたか?」という思考の過程に着目します。思考方法はlogicalだったりcriticalだったりcreativeだったりとたくさんありますが、その「過程」にフォーカスする学問です。
生徒の思考の範囲も、中学1年生は地域社会を対象としたプロジェクト→2年生はプロジェクトツアーで国内外→3年生は海外(異文化体験研修)にフィールドを設定し、段階的に思考対象が広がることで、高校生で実施するグローバルプロジェクト(国内外それぞれの思考に応じた目的地を選択して実施)に繋げて思考と体験を積んでいきます。

田中先生は学習者中心主義ですが、教員の思考イノベーターでもありますね。

私たち教員は、いわゆるTeachingのプロです。生徒たちが行き詰っているときに、ストレートに教員が適切な指示をだしても生徒の心には残らない時もあります。本人の思考の過程、ステップが大切です。なので、生徒への「問い」を多用して、Coachingという役割を目指すことも先生方に伝えています。教員も結果に対して目指すところはあるとは思います。もちろんbestが一番ですが、betterを重ねていきながら回り道でもbestに近づけば、その過程の思考が大きな財産になります。まずは教員から「学べる集団」になっていけばいいと思います。
「本当に工学院の生徒で良かった」と、幸せとか幸福、ウェルビーイングであるという豊かさを生徒だけでなく保護者にも感じてもらえるような学校にしたいと思っています。

一貫教育の出口となる6年後、今年は大学進学実績が良かったですね。

はい、海外の医学部や欧米だけでなく韓国や中国の大学へ進学する生徒もいました。本校はケンブリッジ国際認定校なので、ケンブリッジ大学の受験資格を持つなど、世界で通用する資格を取得できるメリットがあります。また、Round Squareの活動を通じた経験は人生を左右する経験となります。生徒たちは自分の進路をしっかりリサーチし、言語の壁を越えて海外の大学や希望の学部を選択しています。
例えばハンガリーの大学医学部に進学した生徒は、医師になる強い意志を持ち、国によって異なる医師免許のメリットなども比較検討していました。自分のこの先のフィールドを考えながらも、キャリアを意識した結果です。韓国の大学に進学した生徒は、韓国語が好きだったという自身の関心から選択しています。生徒一人ひとりが主体的に進路を決め、行動力を持って挑戦しているのが工学院の特徴です。
日本がダメというわけではなくて、世界で通用する構造を共有しようよ、ということなんです。
インターだけでなく先進クラスの生徒たちもオールイングリッシュで授業を行っているので、世界言語として英語を生かしながら、One Earthを目指して世界と同じ土俵で様々なアイデアを共有する人になってほしい、と思っています。今年は日本の大学の医学部も多く出ました。

世界標準となると、教頭先生が英語の先生というのは頼もしいですね。

英検何級とかレベル分けで優位を目指しているというより、「言語によって思考が拡大」していく、それが目的です。言語と思考が一致しているという考え方は世界の考え方で、言語と思考は密接に関係していて、英語は単なる言語ではなく、その背景にある思考そのものなんです。ネイティブスピーカーと話すと、言葉の意味よりも状況や背景を重視する姿勢がみられます。英語を通した思考法の学習は、日本語だけでは得られない新たな視点を与えてくれます。

日本語における、「“思考が大切“という思考停止」を破壊する作業を重ねていくつもりです。思考を言語化、ビジュアライズ化して進化させていくというコンセプトで中学校を運営していきます。
わたし自身が多くの人に助けられて様々な思考を与えて頂いているので、今度は自分が教員や生徒・保護者に考えを促す機会の布石になれればと思っています。本当に楽しい学校にしていこうと思っているんです。楽しく成長できる学校づくりを目指す一方で、時代の変化に合わせて柔軟に対応していく必要もありますが、変化を伴いながらも、本校の大切な理念や価値観は大切にしていきたいと思っています。

田中先生の生徒や学校への想いをお聞かせいただいてありがとうございました。
田中先生と協働して成長していく生徒を通して、工学院大学の発展を見守ることができることを幸せに思います。田中先生の今後のご活躍を期待しています。

インタビュー:広報室