中学工学院の新しい探究の形、「IBL」

-好奇心を原動力に、未知の世界へ挑むIBL-

2024年度より田中歩先生が教頭に就任し、新たに「IBL」という授業がスタートしています。
工学院の新しい探究学習の形「IBL」について田中 歩 教頭に訊ねてみましょう。

「IBL」とはどのような授業なのでしょうか。

IBLは「Inquiry Based Learning」という言葉の略で「探究学習」という意味です。英語圏ではこの呼び方が一般的で、単なる「調べ学習」のようなものとは一線を画したいと思い、本校でも今年からこの名前を採用することにしました。「新しいことを学ぶ」、「今までと違うものの見方をする」、「新しいやり方を考える」ーこうしたことが生徒にとって楽しくてエキサイティングだと感じられるような環境づくりやアプローチをしています。

IBLの授業では具体的にどのようなことを行っていますか。

時にはLogicalに考えるなぞなぞを解いたり、時には道徳の教材をベースにグループで話し合って、「砂漠に不時着した際、必要なもの」のような問いに理由を絡め説明しながら課題解決に取り組んでいきます。自分と他者との間で対話を繰り返しながら、思考のステップにとらわれることなく自由に考え・話していく授業を展開していきます。

生徒たちはどのような反応ですか。

生徒たちは毎回楽しそうに学んでいます。自分と他者を行き来し、様々な思考に触れることで自分の思考が広がっていく感覚を抱いていくのだと感じています。今現在行っているInspire Highの教材には生徒たちがモノマネをしたくなるようなユニークなナレーターが登場するので授業が楽しく、親和性も高いと思っています。

Inspire Highとはなんでしょうか。

Inspire High(インスパイア・ハイ)は、世界とつながる探究的な学びを提供する教育プログラムです。ガイドと呼ばれる世界中で活躍する専門家やリーダー、アーティストなどが登場し、リアルな体験談や知識が紹介されます。生徒たちはそれをもとに自分の考えを整理し発信します。他者のアイデアも共有することができるので、多様な考え方に触れ、自然と広い視野が身についていきます。ガイドの体験を紹介するナレーターが独特な方なので、生徒にも人気があるのです。

面白そうですね。いままでどのようなガイドの体験談を共有してきたのでしょうか。

アーティストの渡辺直美さんがガイドとなって「自分らしさ」について考えたり、マサイ族の長老と「アイデンティティ」について考えたり、そのほかにもメディアや環境問題などさまざまなテーマを扱ってきました。

【IBLの授業で扱ったガイドとテーマ】

  • 農業テック起業家と考える「農業をどうアップデートするか」
  • 渡辺直美と考える「自分らしさをどう見つける。」
  • 失敗研究者と考える「失敗ってこわいもの。」
  • 環境イノベーターと考える「アクションはどう生み出す。」
  • マサイ族長老と考える「アイデンティティってなんだろう。」
  • 漁師 三浦尚子と考える「地方でどう生きる。」
  • 段ボールアーティスト 島津冬樹と考える「無駄なものってある。」
  • テレビディレクター 上出遼平と考える「メディアとどう向き合う。」
  • モテクリエイター ゆうこすと考える「自分をどう発信する。」
  • クリエイティブディレクター 辻愛沙子と考える「”好き”をどう仕事にする。」

本当に多様なテーマを扱っているのですね。簡単にお会いできない方々の体験談を聞けるというのは魅力的ですね。IBLの授業を通じて、生徒たちのどのような成長をイメージしていますか。

合言葉は「経験は思考から生まれ、思考は行動から生まれる。」です。問いも課題も生徒の「好奇心」を起点にして始まり、「好奇心」こそが探究の出発点であり、推進力でもあります。「比較」、「傾聴」、「拡散⇔収束」、「メタ認知」など、実はたくさんのスキルがこの先の未知の世界には必要です。問いや課題から始まるのではなく、自分の興味関心から経験へ飛び込むような、そんな人になってほしいと思っています。

ありがとうございました。IBLは生徒たちの興味や好奇心を中心に据え、実践的な学びを通じて未来への扉を開くきっかけとなる授業ですね。これからも多様なテーマに取り組む中で、生徒たちがどのような成長を遂げていくのか期待しています。

(広報室)